糖尿病性網膜症

糖尿病による網膜の血管障害により、網膜の血流が低下することが原因でおこる網膜の障害。

 通常、糖尿病を発症して5年以後に出現する合併症ですが、インスリン非依存型糖尿病では発症がいつかはっきりしないこともあり、糖尿病を初めて診断された時点ですでに30−40%に網膜症の合併を認めるとする報告もあります。したがって、インスリン非依存型糖尿病では糖尿病の初診断時から網膜症のチェックが必要と考えられます。糖尿病のコントロールが悪いと、糖尿病罹病期間が長くなるとともに網膜症も進行します。わが国では全糖尿病患者の30−40%が網膜症を有し、そのうち2−4%が失明すると言われています。実際、中途失明(生後の失明)の原因で最も多いものが糖尿病です。このように恐ろしい網膜症ですが、血糖を厳格にコントロールすれば網膜症の発生はほぼ完全に予防することができます。
 
1.糖尿病性網膜症の病期分類
 通常、単純網膜症、前増殖網膜症、増殖網膜症と徐々に進行することが多いが、突然進行悪化することもある。
1)単純網膜症
 病変として毛細血管瘤、点状・斑状出血、硬性白斑(境界がはっきりした小さい白斑)、浮腫が認められる。3ヶ月に1度程度の眼底検査が必要。
2)前増殖網膜症
 単純網膜症に加え軟性白斑(綿花状白斑)、血管閉塞、静脈拡張が認められる。光凝固療法の適応。
3)増殖網膜症
 病変がさらに進行し硝子体側への血管の新生増殖が認められる網膜症。放置すれば硝子体混濁、網膜剥離をきたし失明に至る。光凝固が必要。
 
 なお、網膜症自体の進行程度にかかわらず、網膜の中心である黄班部に浮腫などの病変が出現すると視力障害を来すので糖尿病黄斑症と呼ばれる。
 
2.治療
1)血糖コントロール
 血糖コントロールにより網膜症の予防および進行防止をはかることが最も重要です。
2)光凝固
 糖尿病による血管障害により閉塞した血管周囲には新たに血管が新生増殖するが、これらの新生血管は容易に出血し視力障害をもたらす。したがって、閉塞血管の周囲をあらかじめ光凝固(レーザー光)で焼くことで、新生血管ができないようにする。黄斑部以外は網膜を光凝固しても視力が低下することはありません。
3)硝子体手術
 硝子体出血、網膜剥離などをきたした増殖網膜症にたいし出血混濁の除去、剥離した網膜をもとの位置に戻すなどを目的に行われる。
 
注意点
 網膜症がある患者さんでは、急激な血糖コントロール、妊娠、腎症の進行、人工血液透析の導入などの際に網膜症が進行することがあるので注意してください。
 
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